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創作男子学生ログ置場

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【創作】りゅーとあの子

Twitterに載せたものです。
りゅー目線、永くんと雪くん出演。加賀谷くんと葛くんも名前だけ。
 好きです。付き合ってください。
 昔からその一言を言えた試しがない。一言じゃなくて二言かもしれないけれど、それはまあ置いておいて。
 初恋の女の子は、小学三年生の時に同じクラスだった小林さんだった。休み時間に一人で本を読んでいる姿がなんだかかっこよくて好きだったんだ。当時は告白なんて考えたこともなくて、その後のクラス替えで離ればなれになってしまえば、彼女を思い出すことさえなくなってしまった。
 次に好きになった子は、中学一年生の時の小嶋さんだ。背中の真ん中までまっすぐ伸びた長い髪と、くりっとした瞳が小林さんによく似ていた。小嶋さんが僕に笑いかけてくれる想像をするだけで胸が熱くなって、なんだかエッチな気分になった。当時のことを思い出すと恥ずかしくなるくらいに、僕は彼女を抱きたいと思っていた。やり方もまだよくわからないままに。
 小嶋さんには、一年間片思いをして、告白をする前に失恋した。部活の先輩と付き合いはじめたらしいと聞いて同じ部活の友だちに確認したら、予想以上に幸せそうだったので、すこしへこんだことを覚えている。
 初めての彼女は、それから半年後にできた。バスケ部をやめた僕に優しくしてくれた、カナという女の子だ。カナは僕に一目惚れしたのだと主張して、猛アタックを繰り返してきた。自分にはできなかった「告白」をさらりとやってのけてしまうカナのことがかっこよく見えたし、僕も悪い気はしなかったから、すぐに付き合うことになった。彼女とは意外と相性がよくて、卒業の四日後、カナが引っ越してしまうまで付き合いは続いた。その後はなんだかんだで疎遠になってしまったけれど。
 そして今、僕が好きな子は、同じクラスの女の子だ。僕の斜め前の席に座った、まっすぐなロングヘアの女の子。学校では休み時間のたびに楽しそうに友だちと話しているのに、加賀谷さんのカフェで見かけるときはいつも文庫本を読んでいる。結局、僕の好みは昔から全然変わっていないんだ。
 加賀谷さん情報によると、彼女は最近、童話をモチーフにした短編集を読んでいるらしい。あの子もシンデレラとか白雪姫に憧れたりするのかな。こんな格好悪い僕でよければ、彼女の王子様になりたいと思う。バラの花を年の数だけと、お小遣いで買える範囲で一番高い値段の指輪を準備して、この街で一番おしゃれなカフェに誘うんだ。それで、外国の映画に出てくるみたいに自然に、かっこよく花束を渡してあげる。びっくりする彼女に、僕はこう言うんだ。
「好きです、付き合ってください」
 ……はぁ、思わずため息が出た。そんなにうまくできるわけがないじゃないか。彼女の指輪のサイズも知らないし、そもそもデートに誘う勇気もない。もし誘えたとしても、きっと手は汗ばむし、声は震えて情けない格好を見せるんだ。
「りゅーうー」
 突然後ろから声がして、振り向く前に背中に抱きつかれた。せっちゃんだ、とすぐにわかる。もう一つ足音が近づいてきたかと思うと、背中の温もりが一瞬のうちに剥がされる。
「悪いな、龍司。こいつは俺が面倒見るから」
 足音の主は、やっぱり篠さんだった。
「だってー、りゅーがアンニュイだったからー」
「その状況なら、普通そっとしとくもんだろ」
 二人の会話を聞いていると、何だかおかしくなってきて、僕は思わず噴き出した。途端に二人が顔を見合わせる。再び僕の方を見たせっちゃんの顔はとても、篠さんの顔はすこし、さっきまでより明るくなっていた。
「やっと元気戻ったか」
「え?」
「りゅーが元気ないってさー、かずらん心配して僕に相談してきたんだよー。もうすぐかずらんも来るし、いっぱい笑顔見せよーね!」
「え」
 驚いた。せっちゃんが珍しくまともな発言をしたことも、カズがそんな相談をしていたことも、僕に元気がないように見えていたことも。
「あーあ、せっかくりゅーを笑わせる作戦いっぱいたててきたのにな。あ! ね、りゅー、今から実行してもいい?」
「やめろ」
 コンマ一秒でのツッコミ。カズもびっくりの速さだと感心しながら、篠さんまで巻きこんでしまったことに気づく。僕があの子のことでうじうじと悩んで、僕らしくなかったから。
 気づいたら僕は二人に頭を下げていた。
「あの、……すみませんでした。その、心配かけて」
 顔を上げて、おそるおそる二人を交互に見る。二人は真顔で僕を見つめて、ぴったり同時に言った。
「ばーか」
 再び顔を見合わせて、せっちゃんは嬉しそうな顔をした。篠さんはすこしげんなりした表情。
「あのな、龍司。こういう時は、ありがとうって言っときゃいいんだ」
「……っ」
 だって、と喉元まで出かかったけれど、飲み込んだ。篠さんはそんな言葉を待っていないはずだ。もちろんせっちゃんも。代わりに伝える言葉は決まっている。
「はい。二人とも、ありがとうございます!」
 とびっきりの笑顔にのせて、僕は言った。今日は彼女の代わりに、カズと加賀谷さんを待とうと決めて。
「いい子だ」
 篠さんの手が、僕の頭を撫でて離れていった。
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