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創作男子学生ログ置場

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【創作】りゅーとあの子 その2

Twitterより、りゅーとあの子の帰り道。

 夕方、太陽が沈んで暗くなる時間のことを黄昏時というんだと、今日の国語の時間に習った。道を歩く人の顔がわからなくて、「あなたは誰?」と訊かなくちゃいけない時間という意味らしい。
 たしかに、夏とはいってもこの時間には空も薄暗くて、街灯の真下でもないとすれ違う人の顔はわからない。お腹も空いたし、危ないし、なるべく早く帰った方がいいと思う。それでも部活を終えてぐったりと疲れた僕の足が早まらないのには理由があった。電柱一本分の間隔を空けて、僕の前を歩く人の正体が気になって仕方なかったからだ。
 百五十数センチくらいの小柄な身体に、背中の真ん中近くまで綺麗に伸ばされた長い髪。膝よりすこし短いスカートと二本ラインのセーラー服は、間違いなくうちの学校の制服だ。そしてその子の後ろ姿は、僕の知っている人によく似ていた。クラスメイトの、僕が好きな女の子に。
 声を掛けようか、どうしようかと思っているうちに、駅までの距離の半分まで来てしまった。迷ったのは何を話していいかわからないとか、迷惑そうな顔をされたらどうしようとか、そういう理由だけじゃない。黄昏時の闇に邪魔されて、前を歩く彼女があの子かどうか、確信が持てなかったからだ。部活に所属していない彼女がこんな時間に学校の近くにいるものだろうか。もしかしたら別人かもしれないと思うと、声を掛ける勇気はどんどんしぼんでいった。
 けれど、このままだとまるでストーカーみたいだ。後ろからずっとついてくる奴がいて、彼女も不安に思っているかもしれないし。とりあえずすれ違いざまに顔を確かめて、初めて気付いたみたいに声を掛けよう。僕はそう決意する。彼女までの距離は数メートルだ。どうかこの距離を詰める勇気をください、神様。心の中で僕は祈った。
 と、不意に彼女が振り向いて、僕は心臓が飛び出そうになった。小さく叫び声をあげそうになったのを、なんとか押さえる。
「坂本くん?」
「え、あっ、そ、そうだけど」
 うわあ。声が上ずった上に、噛んでしまった。恥ずかしくて頬が熱くなる。けれど、やっぱりあの子だった彼女は気付いていないみたいだ。僕は今日初めて夕闇に感謝した。
「やっぱり。似てるなぁって思ってたんだけど、確信が持てなくて声を掛けられなかったの」
 花のように(最近読んだ本で覚えた表現だ)彼女は笑った。ああ、やっぱりかわいい。しかも僕と同じことを考えていたなんて。それだけでなんだか嬉しくなって、僕もついつい笑顔になる。
「俺も同じ。暗くて誰かわかんないよね」
 まさに黄昏時って感じ。そう言うと、彼女は大きく頷いた。やっぱり今日の授業のことを思い出したりしたんだろうか。それとも、彼女は本が好きだから、元々知っていたのかもしれない。
 会話が微妙に途切れてしまって、僕は困った。次の話題を振ってもいいのかな。声を掛けたのは不審者じゃないか確かめたかっただけで、僕と並んで歩くのを誰かに見られたら嫌だったりするのかも。
「あのさ、途中まで一緒に帰ってもいいかな。確か駅同じだよね? 女の子一人だと危ないと思うし」
 ありったけの勇気を振り絞ってそう言うと、彼女はすこし驚いた顔をしてから、今日一番の笑顔を見せてくれた。
「うん。ありがとう」
 ああ、頑張ってよかった。ありがとう、神様。僕は心の中でガッツポーズをした。


 翌日。
「りゅー、昨日あの子と一緒に帰ってたでしよ!」
「せせせせっちゃん!? み、見てたの!?」
「ここのカフェの前通ったやろー、俺らみんなおったの気づかんかった?」
 みんなに散々からかわれたのは、また別の話。
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